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【校長メッセージ】2020年度 No,7

2021年の年が明けました。初夢や抱負を話題にしながら、家族や親戚で盛り上がる風景は、今年は帰省自粛の影響で実現できなかったお家もあったことでしょう。世界中に蔓延しているウイルスの猛威は衰える気配さえなく、新しい年を迎えています。この事態の中で驚きや憤り、苦しみや落胆ばかりでもない日常に安堵することもあります。取り分け悲しみに打ちひしがれている人々へ、ぬくもりが伝わる話題、希望に向かって励む人々の話題など「人間っていいなあ」って思える話題に出会ったときがそうです。
例年以上に家にいる時間が増えた年末年始は、読書を通じても、いい出会いが与えられました。この1年、コロナ禍を通じて、未来の社会についてよく考えるようになりました。休暇中に購入した本は、「そう遠くはない近未来の社会とそこでの生き方」を考えるためのものです。皆さんにも考えて欲しいことに触れていた本4冊を紹介します。

1冊目は「ざんねんないきもの事典」です。
私はこのシリーズが大好きです。表紙を飾るサブタイトルがいい。「ざんねんだっていいじゃないか」「ざんねんすぎて愛おしい」「ざんねんが未来を作る」など。生き物たちの特徴をユーモラスに紹介しながら、みんな同じならば、進化の途中で、全滅を免れなかった生き物が、他の生き物と違っていたからこそ命を未来につなげたことを、進化の不思議として伝えています。つまり、「多様であることの重要性」が伝えられています。人間も同じです。

2冊目は、「ファシズムの教室」です。
人間の心理と行動の危うさを、ドイツナチス式の集団行動から読み解くものです。コロナ禍において、国家などの権力が国民の生活や行動を制限することが当然となり、政府や知事の要請に応じなければ犯罪とされる。本来連帯すべき国民が、いつの間にか、分断されて、いがみ合う関係に立たされてしまう危険性を自覚する重要性が伝えられているように思います。

3冊目は、柳美里の「JR上野駅公園口」です。
この本は、年末みなさんが持ち寄ってくれた食品をお届けした時に出会ったホームレスの人たちや、クリスマスプレゼントをお送りした東日本の被災者の方々の現状と重ねながら読みました。貧困が深刻な問題として拡大しているコロナ禍において、帰るべき家,帰るべきふるさとを失った人々の存在を再認識し、彼らに寄り添う社会のあり方を問いかけていると感じました。

4冊目は「なぜ、読解力が必要なのか」池上彰シリーズです。
これは、ぜひみなさんに今のうちに読んで実行して欲しい内容が盛りだくさんです。860円です。お年玉が残っている人は買って読んでください。皆さんが生きていく未来の社会は今の何十倍、いや、何百倍の情報が溢れていることでしょう。その情報から正しいものを選び、正しい知識として運用する力がなければ、幸せに暮らせません。読解力は試験のために必要な力だと誤解しないで下さい。論理的読解力は言うまでもなく、相手の主張を理解する力・多角的見方を身につける力ですが、私が特に納得した「情緒的読解力」についての記述を紹介しておきます。「情緒的読解力とは自分とは全く違う境遇の人、考え方が異なる人自分がしたことのない体験をしている人に対しても共感できる力です。」以上が紹介です。

さあ、今学期も感染には十分に気をつけてください。今日から防寒対策として、コート・体操着の着用方法を変えています。防寒と換気をしっかり行いながら、心身ともに健康で充実した日々を、笑顔で過ごせるようにいたしましょう。

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