平安女学院中学校高等学校
校長 今井 千和世
2024年度 始業式 あいさつ (2学期)
「元気に活動できる人は、休み上手」と言われています。2学期の始まりを9月に戻したので、1週間ほど夏休みが長くなりました。この長い夏休み中に多岐にわたる活動が行われました。姉妹校訪問で交流を深めてきてくれた人、試合やコンクールで力を伸ばした人、平和や人権や社会問題を探求する大会や行事に参加し考えを深めた人、ボランティアで地域や学校行事に協力してくれた人の他、みなさんはいろんな経験をしたことでしょう。その経験や行動について、改めて自分で自分を褒めてください。
ところで、今学期は言葉の使い方について、生徒の皆さんに限らず、我々教職員も意識できる2学期になればいいなと思っています。そこで、始業式にあたり言葉についてお話しします。
言葉の使い方はその人の生き方を表しています。平安女学院で学び働く私たちが求められている生き方は、自分と隣人を大切にして平和な社会を作るために力を尽くせる生き方です。つまり、愛と平和の実践者として生きることです。では、私たちが日常使う言葉が、愛と平和の実践者としての生き方にふさわしいかを考えましょう。
皆さんはわかっていると思いますが、世の中にはいまだに「死ね」「殺すぞ」「どつく・なぐってやろか」などと言う言葉を平気で口走る人がいます。これは論外です。冗談でもいけません。「馬鹿」や「あほ」「まぬけ」も論外です。口にする自分も、投げかけた相手も共に傷つけています。「どうせ私あほやし」という言葉を聞くたびに、私はとても悲しくなり、「そんなこと言わないで。あなたは大切な人だから」と伝えてきました。自分や相手をさげすんだり、軽んじたりする言葉からは、自分も相手も大切にする生き方は生まれません。
また、もうずいぶん昔の私の経験から論外だと思う言葉に「関係ない」という言葉があります。幼馴染で10年以上ひそかに恋心を抱いていた人と歩いていた時のことです。大学生たちが炎天下に汗をふきながら、核兵器廃絶署名をしていた時のことです。「ご協力お願いします」とペンを差し出された時のことです。「僕には関係ない」と彼は言い放ったのです。その瞬間に私の恋心は一瞬にして消えてしまいました。
平和を作る人として生きるとは、平和を破壊する道具や行為を許さないことです。ガザやウクライナの状況を知れば、いったん戦争が始まれば、終結の難しさはもちろん、被害は誰彼を選ぶことなくおよぶことは明白です。「私には関係ない」と思うことが、平和の作り手失格であることを私は皆さんに伝えたいのです。
言葉は魔法です。良いことも、そうでないことも叶えることができる魔法の力を持ち合わせていると言われます。それならば、どんな言葉を使うか私たちはもう少し言葉の使い方を意識すべきだと思うのです。以前言葉についてお話しした時に、言葉は人を幸せにもできるけど、傷つけたり悲しませたり、困らせたり、だましたり不幸せにすることもできる怖さも持っていると言いました。特に、対面で発する言葉ならば、相手の表情や反応を見て、言い換えたり、補足もできますが、SNS上では、それはとても難しいです。
「言葉の先には人がいる」ということを私たちは知ってはいるのですが、ついつい意識しないで言葉を発してしまいます。ぎすぎすした学校にするのも、ほんわかした学校にするのも、この学校に所属している人々の日常かわす何気ない言葉の力が大きいと考えます。「愛と平和を大切にできる生き方を身につけるためには、自分の言葉がどんな影響を与えるかを考えて、言葉選びができる力を身につけることです。
2学期は早々に文化祭があります。それぞれの企画を形に仕上げるためには協働作業が不可欠です。お互いの思いやアイディアを伝える機会が増えます。言葉の使い方次第で支えあう力、励ましあう力、助け合う力を高めることを自覚し、共に豊かな活動を作り上げていきましょう。
2024年9月3日