平安女学院中学校高等学校いじめ防止基本方針

平安女学院中学校高等学校いじめ防止基本方針

はじめに

 いじめは、いじめを受けた生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その生徒の心身の健全な成長と人格形成に重大な影響を与え、その生命にさえ重大な危険を及ぼすおそれがある「人権侵害行為」である。また、キリスト教を教育の土台とする本校は、生徒一人一人がかけがえのない存在であることや、多様性を承認することを日々の教育の中で伝えている。従って、多様性が尊重される社会の実現を目指して、いじめに向き合う姿勢を堅持し、全校生徒が安心して学校生活が送れる環境を作るために、いじめを許さない・見逃さない学校を目指す。同時に「いじめは犯罪行為にもなり得る」である認識を明確にし、人権・命を侵害する行為として始動することとする。

1. いじめの定義

いじめとは、「当該生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、または物理的な攻撃(インターネットを通じて行われるものを含む)を受けたことにより、心身の苦痛を感じているものをいう。個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は表面的、形式的に行うことなく、いじめられた生徒の立場に立って行うことが必要である。

(「いじめの防止等のための基本的な方針」平成25年10月11日文部科学省に基づく)

2. いじめ防止の基本的な考え方

  • ① いじめを「許さない・見逃さない」学校環境をつくる。
  • ② いじめられている生徒の立場に立ちながら、情報を収集し被害を早急に除く措置をとる。
  • ③ いじめる生徒に対しては、毅然とした態度で指導を行い、被害生徒の人権を尊重する意識を育てる。
  • ④ 教職員は生徒・保護者との信頼関係をつくり、関連機関、スクールロイヤーなどとの連携協力に努める。

3. 「いじめ」防止等の組織

(1) いじめ防止、解決のために、「いじめ防止対策委員会」を置く。

いじめ防止対策委員会は、学期毎に年間3回定期開催する。ただし、いじめ問題について緊急の対応が必要な場合は校長(委員長)が臨時に招集する。

(2) 委員会の構成員

校長・副校長・生徒教育相談部長・中学主任・人権担当責任者・養護教諭・カウンセラー   

事案発生時は該当学年主任・担任

但し、校長が必要に応じて、スクールロイヤー等を構成員に加えることができる。

(3) 委員会の役割
  • ① 基本方針に基づく取組みの実施、具体的な行動計画の作成・実行・検証・修正を行う。
  • ② 関係機関、専門機関との連携を図る。
  • ③ いじめの疑いや生徒の問題行動などに係る情報の収集と記録を共有する。
  • ④ 関係生徒への指導や支援の体制及び保護者への対応方針を決定する。
  • ⑤ 重大事態が疑われる事案が発生した時に、その原因がいじめにあるかどうかを判定する。
  • ⑥ 当該重大事態を踏まえた同種の事態の発生防止のための取組の推進を行う。
(4) 年間計画
4月「第1回学校生活と心のアンケート」(新入生のみ)  *過去のいじめ経験の把握
5月第1回委員会を開催していじめ防止基本方針を確定する
6月「中学人権学習会」
*年度毎に設定される人権教育テーマ「平和・いのち・多様性」について、現在の自分たちの生活に結びつけ、クラス作り、家庭・地域社会において大切なことを考える。
「第1回QUテスト実施」
7月「QU学習会」  *データの分析  教員の資質向上の研修
9月「第2回学校生活と心のアンケート」  *事例の把握と即応
10月定例委員会開催
「中高人権学習会」
*年度毎に設定される人権教育テーマ「平和・いのち・多様性」について考える機会を設け、いじめ防止・健全な人間関係育成に役立てる。
11月「第2回QUテスト実施」
*第1回QUテスト結果から行った学級経営実践の検証とクラス状況の把握
2月「第3回学校生活と心のアンケート」
定例委員会開催

4. いじめに関する生徒指導について

いじめに関する教職員の責務については、いじめ防止対策推進法8条には、「いじめの未然防止」「早期発見」「適切かつ迅速な対処」を行うと規定されている。この責務を遂行する上で、取るべきプロセスは、指導提要で示されている「重層的支援構造」によるものである。具体的には以下の指導となる。

(1) 未然防止のための取り組み(重層的支援構造では、発達指示的生徒指導・課題未然防止教育)

いじめは、どの生徒にも起こりうるものであるとともに、どの生徒も加害者にも被害者にもなりうることを踏まえ、互いに相手を思いやる雰囲気づくりに取り組み、授業をはじめ学校生活全般にわたり,自己有用感を味わい、自尊感情を育むことができるように努める。

<ホームルーム活動の充実>
  • ① 生徒に対し、教員は受容的・共感的態度で接すると同時に、自発的な規律性を引き出す努力をする。
  • ② 生徒同士が互いの良いところを認め合ってクラスの課題に向きあうことを促し導く。
  • ③ 生徒の自主的活動を保障し、関係づくりの基礎を身につけられるよう指導する。
  • ④ 「キモイ」「ウザイ」「死ね」等、人権を傷つけるような言葉づかいを徹底的に正す。
<生徒が教職員等にいじめの事実を訴えることのできる体制づくり>
  • ① 生徒が「いじめを受けている」と感じたときに、身近な教職員に訴えることができるように、日頃から生徒の声に耳を傾ける。
  • ② 生徒の表情・態度や様子に注意を払い、細かな変化であっても気になるときには、必ず声をかけ、記録に残す。
<キリスト教教育・人権教育の充実>
  • ① 毎日の礼拝・聖書の時間・宗教行事の中で、自他が共に、かけがえのない存在であることを伝え、互いを尊重する生き方を学ばせる。
  • ② 人権学習会の時間を通じて、さまざまな偏見から自由になり、多様な文化・考え方・個性を認め合える資質を身につける。
<保護者との連携>
  • ① 家庭への日々の連絡等を丁寧に行い、生徒の変化やトラブルについていつでも相談できるような保護者との信頼関係を築く。
<教員同士の協力体制、組織での取り組み>
  • ① いじめの認知はいじめをなくすための第一歩であり、認知件数が多いことを意識の高さととらえ、問題解決に向けて学年及び学校全員体制で取り組むという姿勢をもつ。
  • ② クラス・クラブ等の小さな問題と思われる事柄であっても、教員同士が情報を共有し、担任・顧問以外の者も指導に積極的に関わる姿勢をもつ。
  • ③ 生徒指導に関わる保護者対応・関係諸機関との対応については、その都度 生徒教育相談部長、管理職に必ず報告し、様々な立場から問題の発見に努める。
(2) 早期発見のための取り組み(重層的支援構造では、課題早期発見対応)

いじめは遊びやふざけ合いを装ったり、急激に使用率が増加(中学生97.3%で、高校生は98,9%)しているSNS上で行われるなど、教職員が気付きにくく判断しにくい形で行われる場合があることを認識し、生徒が発するSOS信号を見逃さないように努め、生徒観察を重視する。

また、いじめは、必ずしも「悪意によって引き起こされる」とは限らないという認識を持つ必要がある。「善意」からしたことも、相手にとって押し付けや行き過ぎで苦痛を感じ、結果的に悪意の行為となることがあることも認識しておきたい。

  • ① 複眼での生徒観察から得た情報の共有を図る。
  • ② QUや「学校生活と心のアンケート」結果分析を丁寧に行い、生徒実態を把握する。
  • ③ カウンセラーからの報告を受け、対応が必要な時は、委員会を招集し、対応する。
  • ④ 早期発見のためのチェックポイントは下記を参考にする。
【 登校時~始業時 】
  • いつも一人で登校したり、友達と登校していても表情が暗かったりする。
  • 朝早く登校したり、遅く登校したりしている。
  • 自分から挨拶をしようとせず、友達からの挨拶や声掛けもない。
  • 教師からの挨拶や声掛けに対し、はっきりとした返事が返ってこない。
  • 元気がなく、顔色がすぐれない。
  • はっきりした理由もなく欠席する。
  • 頭痛、腹痛、体調不良をよく訴える。
  • 遅刻や早退が目立ってきている。
  • 発言や態度に、周囲への過度な気遣いが見られる。
  • 次時間の授業の準備をしないで、ぼんやりしたり、ソワソワする。
【 授業時間 】
  • 宿題、課題等の忘れ物が多くなってきている。
  • 教室に入れず、保健室や支援室、教員室へ来て時間を過ごす。
  • 授業が始まってから、一人遅れて教室に入ってくる。
  • 授業開始時、机上や机の周りに学習用具等が散乱している。
  • 教科書・ノートなどが落書きされたり、汚されたりしている。
  • 心身の不調を訴え、たびたび保健室やトイレに行く。
  • おどおどしたり、発言をためらったり、うつむいたりしている。
  • 特定の生徒が間違えたり失敗したりすると、やじられたり笑われたりしている。
  • 二人組やグループを作って学習する時、特定の生徒が取り残されている。
  • 班やグループの代表として発表や活動等で、特定の生徒がさせられている。
  • 特定の生徒に対して、周囲の生徒が机や椅子を離して座ろうとしている。
  • 特定の生徒が入った係等に、他の生徒が入りたがらない。
  • 学習意欲がなく、学習内容が理解できなくなるなど、学習状況の悪化がある。
  • 勝手に席を替えられたり、配布されたプリントなどが渡っていない。
  • これといった明確な理由がないのに、成績が急激に下がってきている。
【 休み時間 】
  • これまで仲の良かったグループから外されている。
  • どのグループにも入れず、一人ポツンとしている。
  • 休み時間に、自分の席から離れないようにしている。
  • 休み時間に、トイレや支援室等に閉じこもっていることが多い。
  • 自分から友達に声かけをせず、誘われるまま元気なくついて行っている。
  • 保健室や支援室に出入りすることが多くなってきている。
  • 特別な用事もないのに、教員室にきたり、近くをウロウロしたりしている。
  • 教師に必要以上に寄り添ったり、隠れるようにして話をしたりしている。
  • 遊びの中で笑い者にされたり、からかわれたり、命令されたりしている。
  • 一緒に遊んでいるように見えても、表情がさえず、おどおどした様子が見られる。
  • 一緒に遊んでいる友達に、過度な気遣いをしている様子が見られる。
  • 遊びの中で、いつもいやな役をやらされている。
  • 特定の生徒が、異様な声掛けやふざけとも受け取れる行為をしている。
【 昼食時間 】
  • グループや班を作って食事をする時、特定の生徒の机だけが、他の子の机から少し離されていたり、その まま机等がポツンと残されたりしている。
  • 特定の生徒が話しかけても、無視されて会話に入れない。
  • グループの話題として、特定の生徒の悪口や失敗等が中心となり面白そうに会話している。
【 清掃時間 】
  • 特定の生徒と同じ清掃区域になりたがらない。
  • 他の生徒は一緒に掃除をしているのに、一人だけ離れた場所にいる。
  • 机・椅子の移動時、特定の生徒の机・椅子が取り残されたり、誰も移動しようとしなかったりする。
  • 特定の生徒だけが、誰もやりたがらない分担をさせられていることある。
  • 他の生徒は既に清掃を終わっているのに、特定の生徒が掃除や後片付けをしている。
【 帰りのSHR~下校時 】
  • 帰りのSHR終了後、用事がないのに下校しようとしない。
  • 配布したプリント等が、特定の生徒だけに渡らない。
  • 何か事が起こると、いつも特定の生徒のせいにされる。
  • 用事がないのに教師の近くや教員室の周りをウロウロしている。
  • 朝や昼には見られなかった衣服の汚れや破れ、擦り傷等がある。
  • いつも一人で下校するか、教師の目の届きにくい所に友達が待ち伏せしている。
  • 特別な理由もないのに、あわてて下校する。
  • 帰る時になって特定の生徒の靴がなくなったり、捜しても見つからない。
  • 本意でない係や委員に選出されることがある。
  • 下校の通学路で、いつも友達の荷物等を持たされている。
【 クラブ・部活動の時間 】
  • 一人で準備や後片付けをよくさせられている。
  • 部活動に遅れて来ることが多くなっている。
  • 頭痛・腹痛・体調不良をよく訴えてくる。
  • 特定の生徒だけに集中してボールを投げたり打ったりして、失敗すると笑い者にしたり、ひどい言葉を投げかけたりする。
  • 特定の生徒だけにボールがほとんど回ってこない。
  • 練習中や休憩中、一人でポツンとしている。
  • 特定の生徒が触った用具を他の生徒が触ろうとしない。
  • 特定の生徒が他の生徒の言いなりになっている。
  • 二人組やグループまたはチームで活動するとき、特定の生徒だけがいつも取り残される。
  • 理由がはっきりしない傷、こぶ、あざ、鼻血、怪我等がある。
  • 部活動を休むことが多くなり、理由を聞いてもはっきりしない。
  • 理由をはっきり言わないで、急に退部・休部を言い出す。
  • 練習着が破られていたりボタンが取れていたり、異常な汚れが見られたりする。

5. いじめへの対応(重層的支援構造では、困難課題対応的生徒指導)

いじめ解消に向けた組織的な指導・援助を保護者と連携しながら進める。いじめ防止対策委員会による被害生徒の安全・安心を回復するための支援と心のケア、加害生徒への成長支援も視野に入れた指導、両者の関係修復、所属集団の立て直しなどを目指す。その手順は以下の通りとする。

  • ① いじめの情報把握・いじめの発見
  • 発見者→担任→学年主任→生徒教育相談部長→管理職
  • 報告は速やかに行う。
  •  
  • ② 対応チームの編成・対応方針の決定、役割分担を行うために、委員会を招集する。
  • ・問題解決のための当該生徒・保護者への事情聴取(事実確認)及び対応
  • ・緊急性の確認  (自殺・不登校・暴行の危険性)
  • ③ 委員会は情報の整理・課題分析後に、いじめ認定を決定
  • 被害生徒・加害生徒・関係生徒周囲の生徒・保護者のメンタルケア
  • ④ いじめ認定についての報告・総括・再発防止の全体への周知

6. 重大事態への対応

(1) 重大事態の意味
  • ①「生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑い」のある場合
    • 生徒が自殺を企図した場合
    • 金品に重大な被害を被った場合
    • 身体に重大な障害を負った場合
    • 精神性の疾患を発症した場合

     

  • ②「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑い」(年間30日を目安)のある場合

    <留意事項>

    生徒、保護者から、いじめられて重大事態に至ったという申立があったときは、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と判断しても、重大事態が発生したものとして報告・調査等にあたる。
(2) 重大事態発生の報告
  • ① 学校から学校の設置者に、重大事態の発生を報告する。
  • ② 設置者から文教課に、重大事態の発生を報告する。
(3) 学校の設置者による重大事態の調査主体の判断

設置者は学校の下に調査組織を設置する。ただし、以下のような場合には、設置者の下に調査組織を設置する。

  • ① 被害生徒・保護者の訴えを踏まえ、学校主体の調査では対応、同種の重大事態の防止に十分な結果が得られないと設置者が判断した場合
  • ② 学校の教育活動に支障が生じるおそれがあるような場合
(4) 調査の実施
  • ① 調査組織の構成
  • 組織の構成については、専門的知識及び経験を有し、当該いじめ事案関係者と直接の人間関係、利害関係のない第三者の参加を図ることにより、当該調査の公平性・中立性を確保する。

    また、重大事態の性質に応じた専門家(弁護士・精神科医カウンセラー、ソーシャルワーカー等)を加えることも考える。
  • ② 調査についての留意事項
    • 事実関係を可能な限り網羅的に明確にする。
    • 因果関係の特定を急ぐのではなく、客観的な事実関係を速やかに調査する。
    • たとえ調査主体に不都合なことがあっても、事実にしっかりと向き合う姿勢をもつ。
    • この調査は、民事・刑事上の責任追及やその他の争訟等への対応を直接の目的とするものではなく、学校とその設置者が事実に向き合うことで、当該事態への対処や同種の事態発生防止を図るものである。
    • これまでに学校で先行して調査している場合も、調査資料の再分析や必要に応じて新たな調査を実施する。

    事実関係とは、重大事態に至る要因となったいじめ行為が、いつ(いつ頃から)、誰から行われ、どのような態様であったか、いじめを生んだ背景事情や、生徒の人間関係にどのような問題があったか、学校・教職員がどのように対応したかなどを指す。

(5) 被害者本人・保護者への適切な情報提供
  • 調査により明らかになった事実関係について情報(経過報告を含む)を適切に提供すること。
  • 関係者の個人情報に十分配慮すること(ただし、個人情報を楯に説明を怠るようなことがあってはならない)。
  • アンケート等により調査した内容を、被害者生徒・保護者に、提供することがある旨、予め調査対象生徒、保護者に説明の上アンケート等を実施すること。
  • 被害生徒または保護者が希望する場合は、被害生徒または保護者の所見をまとめた文書を、調査結果に添えること。
(6) 加害者本人・保護者との連携

加害者本人・保護者と連携し、いじめの解消を図る。

(7) 調査結果を踏まえた必要な措置

学校及び学校設置者は、心理や福祉の専門家・警察官経験者など外部専門家による重点的な支援体制の構築、生活指導への人的配置等について、必要な措置を行う。

いじめ防止対策マニュアル

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