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【校長メッセージ】2020年度 3学期 終業式のお話

「桜はいつもの年と同じように咲くんですよね。」海を見下ろす高台に立った被災者の女性が10年経過した東日本の復興取材に応えてこういいました。さまざまな思いが凝縮しているように聞こえました。大切な家族を失った喪失感は10年という歳月で癒されるはずがありません。あの日から毎年、春の訪れが遅い東北の被災地にも桜が咲きまました。その桜を眺め、いつもあった日常が一瞬にして変えられてしまった無念さ、持って行き場のない苦しみ、歳月を経てもなお押し寄せる虚無感・先が見えない不安の数々・現実に向きあう覚悟などが錯綜している独り言のように感じました。

桜は花芽ができると、葉で休眠ホルモンを作りながら休眠解除の日を待ち続けます。気温が上がってきたシグナルを感じると開花します。被災者の中には「開花」すなわち「新たな生活」へのシグナルを感じられない10年だった方もおられるのです。それでも、咲き誇る桜に生きてきた日々を重ねながら、自分に向けたエールとしてつぶやいたことばとしたならば、その重みを受け止められる人になりたいものです。それが、皆さんに付けて欲しい3つの力の1つである「共感力」です。

ところで、コロナ禍の1年間、「新しい生活様式」を取り入れざる得ない日々でした。人とのかかわりが制限される中で、人とのかかわりがどんなに大切かも知ることになりました。当たり前が当たり前でなくなる不安や、想定外への対応力についても、また、諸外国の対策の違いも知る1年間でした。その間、コロナが収束した社会もひっくるめて考えたことがなんと多かったことか。それを論じた書籍の多さ。私にとってコロナ対策をめぐる辛らつな小説で愉快に分かる書籍ナンバー1は「コロナ黙示録」でした。それはさておき、日本という国は、価値観がひっくり返るほど何か重大なことが起きても、時がたてばなかったことで済まされる傾向が強い国です。最近特にその傾向は、政治の場で多いです。しかし、今回のコロナは世界中の問題であり、コロナ発生が地球環境問題に起因していると言われている側面から、コロナ収束後の社会づくりについての取り組みは続くと思います。そのためにできること考え、実行できる人にも私たちはなりたいものです。

また、コロナ禍では、自分さえ良ければいいとする考え方の人たちの世界中の言動を知りました。感染者への差別や排除はもとより、医療従事者や、その家族への誹謗中傷を見聞しました。自己中心的で、人権を侵害する生き方に未来はあるとは思いません。皆さんが生きる現代は大変な時代です。国内では今なお続く放射能汚染・近々来るといわれる南海トラフ大地震・自然災害の多発・節操のない政治家官僚たちの言動の数々があり、国外では民主化を求める動きが頻発しています。それらについても、あなた方には関心をもって欲しいと思います。

さあ、春は全てが成長する準備の時期です。
先ず、自己の成長の到達点と課題を確認する時間を持ちましょう。
今日、みなさんに配布される「礼拝講和集」(2020年度 朝礼の教職員のお話)は、みなさんが今年度を振り返るためのよきヒントが与えられるものとなることでしょう。

健康に気をつけて過ごしましょう。そして、新学期にまたお会いしましょう。

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