3年生のみなさん。義務教育課程の修了おめでとう。
保護者のみなさま、今日まで数々のご苦労がおありだったとお察し申し上げます。まずはそのねぎらいを込め、お子様の義務教育終了をお慶び申し上げます。
ところで中学生のみなさんはよく本を読みますから、書店や図書館に並ぶ書籍に「〇歳からの何々」というテーマの本が多いことに気付いていると思います。特に13歳14歳15歳の中学生が、生き方について考えるための書籍が増えているのです。
例えば「14歳からの哲学」「14歳からの個人主義」「君たちはどう生きるかの哲学」または仕事や社会について「なぜ僕らは働くのか」「大人になるのび太たち」など挙げればきりがないほどあります。
これらの本に共通する内容は、「どう生きていくかを考える時期だよ」というメッセージと、それを考えるためのヒントが文のあちこちにちりばめられていることでしょうか。
さて、義務教育の期間を終了した3年生のみなさんに今日送りたいメッセージは2つです。
まず「私の世界を生きる」ことを真剣に考えようということです。考える入口はたくさんあります。その入り口の扉を開けて考えるのは早ければ早いほどよいと言われています。
まず、すぐ目の前にある高校生活をどのように過ごしたいのか、あなたはどんな職業を希望しているのか、そのために進むべき進路はどうするのか、あなたが暮らす社会はどうあってほしいのか等、どの扉から開けて考えてもよいのです。ただし、考える時に大切なことは一人で考える時間を持つことです。
なぜ一人で考える時間が必要かというと、誰かと一緒に考えていると、自分がしたいことが分からなくなったり、自分で考えられなくなったり、自分を見失ったりするからです。自分自身の内面から湧き出てくる自分の声を聴きながら、その声を信じて「私の世界を生きる」つまり、あなたの生き方を真剣に考えてほしい。あなたの人生はあなた以外の誰もが代わって作ることも、歩むこともできないから自分で考えるのです。これが1つ目のメッセージです。
次に2つ目のメッセージを伝えるために「君たちはどう生きるかの哲学」という本の一説を紹介します。「学問の事は書物や先生の教えから学ぶしかない。水が水素と酸素からできていることは教えることができるが、冷たい水の味がどんなものかということになると、君自身が飲んでみない限りどうしたって君に分からせることはできない。自分が体験した時の、自分の心の動きに何が正しいことかという感覚があり、それを握りしめてそこから考えていくことが重要で、それが生きていくときのよりどころとなるはずだ」と書かれた部分があります。
この短い一文は生きる上で大切なことを凝縮していると思います。
人間は、体と心と頭の3つが調和して一体となっています。この3つには優劣をつけることはできません。「頭で、物事が分かる」「心で、物事を感じる」「体で物事を体験する」この3つともおろそかにはできません。どれか一つをおろそかにすれば、必ずほかの2つにも影響が及びます。分かる・感じる・体験する、これらを一体として、あなたの人生があります。
あなた方は、あなたの頭と心と体を大切にバランスよく使いながら、あなたが信じる道を歩みなさい。
みなさんが自分の人生を考えることが、18歳成年・大人への階段を上り始めたということなのです。
改めて、9年間の義務教育終了おめでとうございます。