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7.162025
【校長メッセージ】2025年度1学期終業式あいさつ
みなさんは古本屋を知っていますか。
私はたまに、古本屋をのぞきます。私にとっては、目当ての本を買い求めるのが本屋で、本を眺めるのが古本屋です。せっかく立ち寄ったからには1冊くらい読みたい本を見つけようとします。先月は、寺町通りの古本屋で手に入れたのは3冊です。
1冊は、バーナードベンソンという物理学者が書いた「平和の本」という本です。深くて大切なことを優しい言葉とクレヨンタッチで描いた挿絵が描かれた本なので、子供から大人まで読める本です。2冊目は「世界で最も貧しい大統領」として日本でも知られている南アメリカのウルグアイで5年間大統領を務めたホセ・ムヒカさんの考えをまとめた「ホセ・ムヒカの言葉」という本です。3冊目は、「鈴と小鳥と、それから私、みんなちがってみんないい」で知られている「金子みすずこころの宇宙」です。
3冊それぞれ選んだ理由は単純です。「平和の本」は、いつになったら馬鹿げた愚かしいしい戦争という人殺しをなくせるのかその答えを探しているヒントが欲しいから。「ホセ・ムヒカの言葉」は、5月に89歳で彼が亡くなってしまったから、「金子みすずこころの宇宙」は、言葉の威力にこだわり続けたいからです。3冊とも期待以上の内容でした。選んだ理由が別々の本ではありましたが、共通していた点があります。1つは、強い言葉・厳しい言葉・激しい言葉が全くない文章で綴られた内容である点・2つめは、人生で大切にしなければならない時間を自覚して生活するためにはどうしたらいいかを教えてくれていた点、3つめは、人や社会を見るまなざしの優しさこそが、人や社会をより良くするという作者の考え方です。性別も年齢も生きた環境も好みも家族構成も仕事も一つとして共通点のない3人が同じ願いを心に留めて綴った・語った文やスピーチや詩の世界がなんとも素敵で魅せられました。みなさんは図書室にふらりと立ち寄ることをお勧めします。
さて、今日で1学期が終わりますが、みなさんは1学期とはどんな時間だと理解しているでしょうか。学校の1学期とは、古い上着を脱ぎ捨てて新しい上着をまとい、真綿らしい学校生活に慣れ親しむ時間です。学校生活がより豊かになるために従来とは違う取り組みが始まり、その意味を理解して、その取り組みに挑み、親しみながら、自己を成長させる準備の時間です。
今年度本校は、4月はじめに「いじめをしないためにはどうしたらいいか」を話し合い、全クラスからのメッセージを作成し、全校一斉LHRを実施しました。愛に包まれた学校を目指すためには、人を排除する言動があってはならないので、みんなに考えてもらいました。1学期はいじめの問題が起きやすいと言われますが、皆さんの優しい気持ちが実を結んで、私の耳にそうした話は届いていません。
教育活動以外では、各フロアには皆さんにいち早く情報を発信し正しい認識を共有するためのデジタルサイネージが取り付けられました。また、熱中症対策の一環ではミストを取り付け中です。課外活動面では演劇部と陸上部ができました。そして、食べることも、着ることも、同調圧力に左右されずに自分で判断・選択できる環境作りと、清潔な教室環境を保持するために清掃方法も全校一斉同一方式に切り替えられました。もちろんトイレの改修計画や、防臭対策も進めています。このように、変化が加えられた学校生活に慣れるのが1学期です。2学期は慣れ親しむことができた環境で楽しむことを身につける学期です。新しい学びの方法・新しい価値観のもとで自分を成長させるためにチャレンジする学期です。
これから長い夏休みに入ります。2学期にやりたいことを思う存分やれるためには健康でなければならないのですから、健康に気をつけることを意識した生活を送ってください。何かにチャレンジするためには、心の健康も大切です。私たち人間は生きている限り何かしらの悩みや不安がつきものです。困りごとを抱え悩むことは大切ですが、心の健康を害するまで一人で悩むことはよくありません。抱えきれない困りごとは、信頼する大人に相談するようにしてください。必ず解決の糸口が見えてくるものです。
そして、今日から始まる三者面談や家庭訪問では、あなたの良さと成長を確認してください。そして、自分で自分を褒めるのです。同時に、もっと成長できるあなたなのですから、何をすれば良いか自分の課題も確認して下さい。
では、事故や犯罪に巻き込まれることなく有意義な夏休みを過ごしてください。