卒業生のみなさん卒業おめでとうございます。保護者の皆様、お子様の卒業を心からお祝い申し上げます。
さて、みなさん。母校を旅立つにあたり最後のメッセージを贈ります。まず、Well-beingという言葉を贈りたいと思います。直訳は「健康・幸福」です。この事については長期にわたる世界的な感染拡大で、誰もが考えさせられたことです。
健康とは単に「病気でない」という狭い意味ではありません。
WHO憲章では、「肉体も精神も社会的にも満たされている状態」と定義しています。この言葉をみなさんに贈る意味は、あなたの人生の目標設定のためです。
ある書物に、Well-beingとは、「幸せをもたらすような、社会と人の良い状態、おかれて場における幸福」と書かれています。
パンデミックの最中において、多くの人々が健康や幸福に注目したのは当然です。
現代社会の問題は、「自分の幸せだけを求め、財産や地位や名誉を得るために競争に拍車をかけ、対立や格差を生み出してきたこと」、「自分の暮らしの快適さを求めた結果、自然環境を破壊したこと」です。
その反省として、健康や幸福を希求しています。もちろん幸福の捉え方は、文化の違いで異なる面もありますが、国際的な幸福度調査比較結果も参考にして、幸せをもたらす社会について考えることを進めます。
そして、みなさんには、自分だけではなく、人は誰もが幸せになることを願っているという認識に心に留めて、家族や地域の人々、国を超えて様々な人を、幸せにすることを考えられる人になってほしいと思います。
それが、キリスト教学校であるこの母校での学びの価値であったことを伝えておきます。
もう一つ「生きるとは誰かに光を与えること」という言葉を贈ります。
聖書の中に「あなた方は地の塩、世の光である」という箇所があります。塩も光もなくてならないものです。
しかし、塩も光もその存在をひけらかすことはありませんね。塩少々で、あるものの味を引き立てるわけです。光も同じです。キリスト教では、光による照明が、人に認識を与えるとされてきました。
今世界は、憎しみや苦しみに包まれて生きづらさを抱えている人々が大勢います。現在ウクライナは戦火の最中にあります。クーデター後のミャンマーでの迫害など戦争や紛争に限らず、現在の世界には、山積する問題の渦中で、傷つき苦しんでいる人が大勢います。
世界は「塩であり光である生き方をしている人々」を望んでいます。
みなさんが平安女学院で6年間又は3年間過ごし、キリスト教学校教育に触れる中で、すでに「塩」「光」の人となりを身につけられたと思います。
他者のために、自分の存在・自分に与えられている賜物を差し出し、他者を生かす人として また、社会の不正や無関心を訴える揺るぎない人格を備えた人として、歩みを進めてください。
4月よりこの国も「18歳成人」となります。「善き成人」として生きていってください。